AKIRANAKA

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July,2023

Pre-Fall 2023 Inspired by Constantin Brâncuşi

この立体的な彫刻を見て、何を想像するだろうか?
「抽象ではなく本質を表現した具象だ。」
そう語るのは、ルーマニア出身の20世紀を代表する独創的な彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシである。

丹念に磨かれた抽象オブジェのようなこの作品は、一見羽根やくちばしのように見える。彫刻とは思えないほどの軽やかさ、まっさらに磨き上げられたブロンズ、「鳥」が飛び立つ軌道のような力の流れを感じることが出来るのではないだろうか。

今シーズン私たちは、ブランクーシが示したオブジェクトの本質への理解を進めると共に、女性が持つ本質への探求や服飾造形が持つイデア*から離れ、様々な実験を通してコレクションを制作していった。

*イデア…本文内で観念、または理念を意味する

Creative Director NAKAのNOTE – PRE-FALL 2023

コンスタンティン・ブランクーシは、幼い頃から手の器用さを見出され、美術学校へ進学後、近代彫刻家の父と称されるオーギュスト・ロダンのアトリエで働き始める。しかし、「大樹の下では何も育たない」という言葉を残しロダンの下を離れ、独自の美学を追求し革新的なスタイルを構築していった。

特に「空間の鳥」という作品では鳥というタイトルが付いているが、鳥をそのまま作っているのではない。空に向かって鳥が飛翔していく様を形態にしたならば、こういう形態になるであろうというように作り上げたものである。

つまり彼にとって鳥を象徴するものはくちばしや羽自体ではなく、空に舞い上がっていく行為そのものであり、それが鳥の本質であると説いたのだ。

実験 – PRE-FALL 2023

ブランクーシが鳥の飛翔やその動きの中に本質を捉えていったように、NAKAは女性の外見ではなくその動きや仕草の中に女性性なるものを見出すことで如何に女性の本質に近づけるかを試みた。また服飾造形におけるイデアが存在するならば如何にそこから離れられるのかを模索しながら制作に向かった。

女性の本質への探求は、非常に概念的であり、実験の連続であった。
特に、「つまむ、つかむ、絞る、折る、ひねる」など現代の服飾造形の原則から離れたプリミティブ(原始的)な方法を繰り返し実験する過程において、女性性なるものをシルエットに見出していった。

また、視覚的に捉える女性のフォルムでなく女性の本質をその動きの中に見出し、女性らしい振る舞いをより強く可視化するディテールやカッティングを追及した。

「私が語る彫刻家とは、固有の生命それ自体に属する生命を所有するものであり、生命の形態を模倣したり再現するものではない。」 – コンスタンティン・ブランクーシ

存在する課題に対して自らの創造性や美意識を磨いていくことで、その人自身が持つパーソナルな美しさに辿り着くことができる。

誰しもが持つイデアから離れ、異なる起点から導き出されたシルエットやディテールは、それを纏う女性のワードローブに新しい可能性を付加できると信じている。
そして私たちがイデアから解放される時、新たなスタイルを見出す事が出来るだろう。