November,2023
女性を鼓舞できる様な強いエレガンスで包みたいという思いがまずありました。それはただの美しいラインや洗練されたディテールではない、何かしっかりとした知性に裏打ちされた象徴的なものであるべきだと感じていました。
コンスタンティン・ブランクーシの様々な彫刻には非常に深淵な美しさがあります。外観は非常にシンプルでありながら、そこに込められた壮大なコンセプトや挑戦はそれを学ぶものを驚嘆させます。
私はその様な知性や純粋な創造性を反映させた装いを現代の女性へ届けたいと感じていました。
Inspired by Constantin Brâncuşi
私が感じる彼の彫刻の突出した個性とは、作品の時代性が消えているという点にあります。非常に古代性を感じると同時に未来的でもあるという非常に不思議な感覚です。それは形体の純化と素材の極度の磨き上げを特別なバランスで表現することにより到達しているのではと考えています。
“空間の鳥”や“スリーピングミューズ”などはその顕著な例です。
Autumn Winter 2023 – AKIRANAKA NOTE
では洋服においてどのように古代性と未来性を表現し得るか、それをチームであるデザイナー達と日々研磨して行きました。
今季の洋服に多くみられる構築的なシルエットやショルダーライン(肩だけでなく肩から袖への繋がりや微細なカーブ)は、洋服をミニマルに見せる重要な部位であり、それを極限までスムーズにするために今季のコートなどではアームホールを前傾させています。
つまり洋服を部位の集合として捉えるのではなく一つの塊(古代的な形体表現)としてシルエットを構築しているのです。そうすることにより見る角度に影響されずシルエットに純化(複雑さを取り払ったライン)をもたらす事が出来ました。
Autum Winter 2023 – Melissa JK
私が感じ取るブランクーシの未来性とはSFにみられるフューチャリズムではなく、身体のもつ形状を認識出来るギリギリのラインまで削ぎ落としている点にあります。
私が感じ取るブランクーシの未来性とはSFにみられるフューチャリズムではなく、身体のもつ形状を認識出来るギリギリのラインまで削ぎ落としている点にあります。
洋服の中に人の体を内包する際にどうしても生まれる体に沿って生じるラインを如何に削ぎ落とすかという課題から背中にチュールディテールを入れたコートも制作しました。
そうする事で本来肩からヒップに向けて直下するラインを美しいカーブで表現する事が出来ました。
Autum Winter 2023 – Gladys coat
今季私たちが制作したグラフィック(プリント柄)も同じように古代性と未来性から発展し、いかに知性へ繋げれるかをテーマにしたものです。
制作過程においては古代性を象徴する大理石の写真を何層にも切り、それを拡張しながら繋げて行くという作業を繰り返しました。
そうする事で鉱石にみられる硬さに液体のような美しい流れ(未来性)を生み出す事が出来ました。
また本来硬さの印象を持つ鉱石を柔らかく表現したり、鉱石柄で身体を包むというグラフィックからは様々な寓意を感じ取ることが出来、その抽象性を女性が纏うという事に私は大きな意味を感じています。
女性に内在する美意識や様々な意思というものは抽象性を通して表現される方が自然だと私は感じるからです。
ブランクーシの語った言葉には、装いをデザインする私たちに大きな問いかけをしているように感じます。
それは装いは女性を何かで覆い隠すものでなく、女性の中に存在する様々な美を可視化するものであるべきだという事です。
今シーズンの私たちの提案が、現代の女性達をエレガンスで包み、同時にそこに内包された知性を引き出すものになるように願っています。
AKIRA NAKA