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October,2026

イサム・ノグチへの敬意

香川県のイサム・ノグチ庭園美術館は自分が日本の美術館で一番思い入れのある場所だと言っていい。またイサム・ノグチはアーティストとしても最も影響を受けた一人だと思う。

何がそれほど自分を動かしたのかと言えば、彼の制作したものに自分の知らない日本の美を見出したという点だろうか。彼(本名イサム・ギルモア)は日本人とアメリカ人のハーフであって、純粋に日本で育ち日本の教育を受けたわけではない。3歳から12歳まで日本で暮らしたとは言え、彫刻や彼のスタイルはアメリカでの創作活動や自ら師事したブランクーシによって形成されていったものであり(あくまで私の主観だが)、日本の様々な文化や習慣を身につけて見出していったものではない。しかし、その彼が晩年に香川県にアトリエを設けて製作した、彫刻、家、空間、庭にはしっかりと日本の美が表現されていた。そしてそれは自分が見た多くの日本の庭園や彫刻、空間のどれとも異なるモダンで心を打たれるものだった。

庭園美術館では撮影が禁止されており、手元のノートに描いたメモ

そこで感じたことは純粋に魅了される気持ちと、何とも言えない悔しさが入り混じったものだった。これを何故アメリカで育ったアーティストに作られたのか、現代の日本の作家が作れていないのか、という複雑な思いだ。と同時に日本の美意識やその表現にはこうしたモダンな発展に耐えうるカタチがあるのだと気づく事ができた。伝統によって受け継がれて来た形状や方法を外れても、そこには日本らしさが宿り時間を超えて行く力を有する事が出来る。そして日本の美はそれを純粋に継承するだけでなく、そこに働きかける事で発展出来るまだ開けられていない多くの扉があるのだと気づくことが出来た。

日本人はその文化に対するリスペクトが強いが故にどうしてもその純粋な継承にのみ力を入れてしまう傾向がある。その属性を持つからこそ多くの文化や習慣が純粋なまま保たれてきたというのも事実だが、それと異なる視点で創作する作家や作風がもっとあって良いと思う。本質を極め、その究極の理解へと進む日本人らしい道と、それを学びながらあえて今それをどのように愛で、更新、刷新していけるのかという道、その双方があってこそ自然だと。

自分をイサムと並べている訳では無いが、自分も多くの時間をアメリカやベルギーで過ごして来たからこそ感じる日本の特異性やユニークさがある。そこに日本人として向き合いそして学ぶことで、それを現代のものとして創作したいという思いを持つようになった。その思いから創られたのが2026SSのコレクションであり、それ以来同じ日本文化への敬意を持って制作に当たっている。そこへ導いてくれたのはイサム・ノグチであり、彼とその師ブランクーシには特別な敬意と感謝を抱いている。